先日下記の「社労士の将来性」について記事を書いたところ反響が大きかった為、もう少し深掘りしていこうかと思います。

 

↓先日の記事リンク

「社労士の将来性?」社会保険労務士を目指すべきでない理由

 

 

少し要約させていただくと、

・独立の道は需要が少ない

・活路は企業内社労士にある

 

 

という2点について言及しております。

少し社労士にとって厳しめの現実を見る批評であったため、今回は社会保険労務士の活路である「企業内労務士」という立場について実務からの観点に即して分析していきます。

 

 

 

1、企業内社労士の求められる仕事とは?

企業内労務士に求められる業務は「人事」や「労務」といった事務職と特に変わりありません。

 

・給与処理(面倒な業務)

・労務処理(the事務作業)

・人事対応(面接準備など)

 

といったところがメイン業務となってきます。

 

 

世間の声「え!?じゃあ企業内社労士なんて要らないじゃん」

なんて言われそうですが、これもまた少し違いますのでもう少し深掘りしていきましょう。

 

 

 

2、企業内社労士と人事労務職員の違い

社労士と人事労務職員は業務は同じですが、需要が違います。

まず人事労務の業務についておさらいですが、

 

・給与処理→変形労働制の残業時間算定など法規定に対応する必要がある

・労務処理→社会保険知識及び労働保険知識など職員対応や書類作成に法知識が必要である

・人事業務→契約書作成や就業規則改定にあたって不利益変更原則など法知識が必要である

 

 

どうでしょうか?少し見えてきましたでしょうか?

そうです、人事労務の業務に労働法規は切っても切り離せない存在なのです。しかしそこでも出てきそうな疑問が↓

 

 

 

世間の声「えっ?でも大抵の会社って普通の職員がやってるじゃん」

確かに仰る通りです。大抵の企業では普通の職員がやっています。ここが今回の一番重要ポイントなのです。

 

 

 

 

 

3、何故企業内社労士が必要か

上記の通り大抵の会社では一般職員が法知識が必要である人事労務業務を行っています。つまり、一般職員にもこなせる程度の業務である為、一見企業内社労士に需要はなさそうです。

事実、人事や労務の法知識は年金事務所に確認やgoogleで調べれば大抵の問題が解決してしまいます。しかしこういう場合はどうでしょう?

 

 

事例1:1年間の変形労働制を採用しているA企業で1日12時間の労働をさせたい。これは適法か?また、必要処理はないか?

 

 

 

・・・上記がすぐに答えられる、若しくはいくつかの回答が浮かぶあなたは知識深いです。

しかし、大抵の人事労務社員はこれをネットで調べてもすぐに答えに自信を持つことは難しいかと思います。

 

 

少し難しい話になってしまいますが、この事例での考慮ポイントは多岐に渡り、

・1年間の変形労働制は一日10時間が限界のはずなのに12時間労働は適法か否か

・適法であるならば残業代の関係は?

・適法であるならば36協定の範囲は適用か?協定変更の必要性は?

・適法でないならば適法とする限界範囲は?

 

 

 

・・・・・・・・etc。

たったこれだけのために代替案の提案やコンプライアンスの順守など数多くの労働法規が関わってくるのです。

これを知識の浅い一般職員に任せることは企業にとっても不安材料である為、企業内社労士をそれなりの待遇で置いておく企業は多数あることを見てきました。

 

特に大企業になればなるほどコンプライアンス監査が厳しく、労務士、強いては弁護士が出てくることもあるほど必要性かつ専門性のある業務なので、企業内社労士は比較的需要のあるポジションなのです。

 

 

 

 

4、企業内社労士になるために

 

では、企業内社労士になるにはどうすればよいでしょうか?

 

 

世間の声「社労士の資格を取ればいい」

それはもちろん正解です。が、不足です。それだけで企業が求めてくれるほど世の中甘くありません。資格取得はただの入り口です。

 

企業内社労士になるためには2通りあります

1.企業に社内労務士として採用される

2、人事労務職員から企業内労務士として成長する

 

 

以上2通りがメインです。

 

1の「社内労務士として採用される」について、企業内社労士として採用されるためには必ずと言っていいほど「実務経験」が必要です。

給与処理や労務処理など総合的に一人でこなせる技能及び、英語対応などの付帯能力が求めらることも多く、難易度はかなり高いといって差し支えないレベルです。

 

 

一方2の「社内で成長して企業内社労士となる」ついてなのですが、、企業内社労士の8割がこちらであると筆者は経験から感じています。

企業内労務士になるには下積みが必須です。それを飛ばして企業内社労士という高度専門職になることはできません。(※資格取得だけの名ばかり企業内社労士なら可能ですが)

そこで、企業内で人事労務職として下積みをこなし、資格を取得し、いつのまにか企業内で労働法務を任される企業内社労士になっているというケースをよくお見掛けいたします。

 

 

 

これは筆者の推測ですが、2のケースが多い理由には下積み問題だけでなく、信頼性も大きく関わってくるのだと思います。

人事労務という社内の人間問題、人事評価問題というセンシティブな問題を扱う部門に、急遽外部から入ってきた人を責任者におけるでしょうか?やはり人間性などを確認してから登用したくなるのが会社ではないでしょうか?

そういう意味でも企業内で下積みから企業内社労士を目指すことが近道なのではないかと思ったりします。

 

 

 

 

企業内社労士という選択

企業内では人の入れ替わりや困難怪奇な労務対応は必然に発生します。そこで企業内社労士という選択は十分に「需要あり」であると分析致します。

過去の栄光では「社労士なら独立」という選択ももちろんありだったのかもしれませんが時代は変わってきているように感じます。

 

確かに誰にも邪魔をされない文句も言われない自己責任である「独立」という選択肢の魅力は筆者も大いに賛成することろです。

それでも、企業内で企業の安全衛生を守る「企業内社労士」という職務の需要は社会から十分あることからも、また仕事のやりがいとしても選択の余地は大いにあるのではないでしょうか。