国が推し進めている「回復期リハビリテーション病棟」について、いったい病院経営上どういう変化が起こるのか具体的に分かりにくいかと思います。

イメージとしては「リハビリする病棟でしょ?」と思われる方も多いと思います。それはもちろん正解です。しかし、DPC病院でも出来高算定病床である為、用途は意外に複雑ですので、簡単にメリット・デメリットを添えて説明していこうと思います。

 

 

■回復期病棟のメリット

・リハビリ単位について通常6単位限度→9単位限度となる。当然のことながらデメリットなく1患者当りのリハビリ収益としては増収が見込める。

・急性期の処置を終了した患者がメインである為に医療消耗品の使用数が抑えられる。医療経営に係る医療消耗品の経費割合は低いとは言えない為、多少の経費削減には効果があると考えられる。

・回復期病棟は昼間13対1夜間3名体制であることから、基本的には看護師の需要が一般病棟に比べて少ない為、人件費抑制となる。看護師人件費は病院経営において一番の比重を秘めることが多いため、重要なファクターとなるだろう。

・一般病棟に比較して、退院時期の調整が容易な為、病床稼働率を高水準で操作しやすい。回復期病棟は1病床当り¥40,000程度/1床/1日と推定される。もし同じような収益病床が3床空きが続いたとすれば年間で4380万程度の損失を被ることになるが、そのようなリスクを比較的抑えられることはメリットである。

・7対1の看護必要度要件を満たすための逃げ道として、回復期病棟は適当である。DPC包括患者もⅢ群若しくはⅢ超期間ともなってくると回復期病棟より病床単価として低くなる可能性がある為一石二鳥である。

 

 

 

■回復期病とのデメリット

・一見収益が上がるように見えるが、セラピストの配置にかかる人件費を加味すると収益に対する費用は総じて8割を超えることも多く、高収益事業とは言えない。

・現状収益事業とは言えるが、2年ごとの診療報酬改定が懸念材料である。一部の情報ではリハビリテーション単位あたりの点数が低く設定される恐れがあると指摘されている。もし収益率が5%前後と落ち込めば、それは収益事業としてリスクのある事業になる可能性が有る。

・セラピストの人員確保が負担となる。セラピストが不足して単位が満足に取得できないとなると回復期病棟の黒字収益は見込めない。また、診療報酬改定によりリハビリの需要が経営上減退した場合、余ってしまった大量のセラピストの処遇に困ることも考えられる。

 

 

 

■急性期病棟との親和性

回復期リハビリテーションと急性期病棟は親和性がある。
診療報酬上のリハビリテーション取得単位を見ればわかる通り、「心大血管疾患」「脳血管疾患」患者について単位当たりの点数上割の良いリハビリを実施することが可能となる。

例えば脳神経外科の急性期病院であれば、大抵の救急及び入院患者は特定疾患のリハビリテーション単位を取得可能な為、リハビリテーション人材1人あたりの費用対効果が高くなることが期待できる。

また、手術~リハビリ~退院までを流れるように病棟移動できることにより、一貫して自院で担当できることとなるため、入院から退院までの収益の一連化が可能となる。

更に、退院後の患者についても通所リハビリテーションや、訪問看護など、ADLスコアや退院サーマリーを活用することで退院後の収益に繋げることも十分に可能となるだろう。

 

 

 

■まとめ

過去の急性期病院は救急患者を受け入れて「手術」を実施し、安定すれば他病院へ紹介。病床を空けることで次の手術に繋げるという「手術」主体の収益構造であったかと思います。

確かに現在でも「手術」の数をこなせば収益は間違いなく一番上がることでしょう。核心を突けば手術室の利用率を極限まで高め、救急患者を自院へ呼び込めるならば回復期病棟など不要なのかもしれません。

 

しかし、マクロ要因(外的要因)から見れば1つの病院で手術からリハビリまで一貫してこなしてもらえる需要が増えてきたこと、また、救急患者受入の競争も収益獲得の観点から増えてきており、「急性期」だけとして生き残っていくことは難しいかもしれません。

「回復期」をメインにする病院にとってはもちろんのこと、「急性期」にとっても回復期病棟は今後重要な立ち位置になってくるかもしれませんね。

 

厚生労働省リハビリテーション施設基準
‘https://medical.mt-pharma.co.jp/support/sh-manual/pdf_2016/sh_15.pdf

兵庫県立大学:回復期病棟についての研究
‘http://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/1-1/159.pdf